遺産相続トラブルQ&A 相続放棄の覚書は有効?

  1. TBSの「ひるおび」で遺産相続の気になる話題を扱っていました。遺産の分割で裁判所に持ち込まれた件数は2016年度の司法統計で1万4462件。ひるおびのアンケートでは50歳以上の男女200人に尋ねたところ10人に1人が遺産相続をめぐりもめ事を経験している模様。

番組で解説していた八代弁護士によると「遺産相続で残念なのがそのトラブルが原因で親族関係の修復が不可能になってしまうケースが多いこと」だそう。しかしそんな大問題に発展してしまう遺産相続にもかかわらず、相続について知っているかのアンケートに対しては「全く知らない」「あまり知らない」が合わせて約7割にもなってしまうという。そのため番組では例題に対して八代弁護士が法的判断を下すという形で分かりやすく遺産相続の仕組みを解説していましたのでここに記録しておきます。

高齢の兄:サブロウ(75)が相続放棄を条件に若い妻:マリ(20)と再婚したいと言い出した。

2番目の兄と妹(私)

「にいさん、騙されているのよ。遺産目当てだから絶対反対!」

サブロウ

「マリに遺産を譲る気はない。マリも承知だ。だから結婚させてくれ。子供がいない身だ。残りの人生をマリと一緒に過ごしたいんだ。」

マリ

「遺産が目的ではありません。証拠にこの覚え書きをお渡しします」と『サブロウの遺産相続を放棄する』という内容の署名・捺印の覚書きを渡してきた。

とうとう熱意にまけた私たち兄妹は2人の結婚を承諾した。

しかし結婚後1ヵ月でサブロウが亡くなると急に、「やっぱりサブロウさんの遺産を分けてほしい」とマリが主張。

遺産放棄の覚書きはこちらにもらっている。果たして、このマリの言い分は通るのか?遺産はどのように分けられるのか。

八代弁護士のジャッジ

遺産相続の放棄書面を書いた年下妻であるが、兄の遺産を渡す必要が

「ある」

<参照>民放915条 相続の承認又は放棄をすべき期間

相続放棄は

  • 相続の開始(遺産所有者の死亡)を知った時から3か月以内にしなければならない

ここから言えるのは

「遺産産所有者の死後のみ相続放棄可能、逆に言えば遺産所有者が生きている間は相続放棄不可能」

従って今回のケースは、遺産所有者のサブロウが生きている間に相続放棄書面を書いたマリの書面は効力は無く、マリは婚姻届けを出した時点で相続の権利が発生する。

遺産はどのように分けられるか

子供がいないサブロウは、遺言書がなかった場合、法定相続の規定になるため以下の通りとなる。

結婚前は

マリは他人なので当然権利はない。兄妹2人で均等割となる。

妹 1/2

兄 1/2

マリ 0

結婚後は

兄弟がトータル1/4、妻が3/4の取り分となる。

妹 1/8

弟 1/8

マリ 3/4

“遺産は妹と弟に譲る、マリには1円も譲らない”と遺言書に書かれていた場合

『遺留分』…相続人が一定の遺産をもらう権利、があり

マリは遺産の1/2をもらえる。

妹 1/4

弟 1/4

【管理人の感想】

遺留分について今回の放送ではサラッと紹介されただけでしたのでググってみました。「最低限これだけは元々の相続人に対して残してあげなさい」という割合の決まりがあるということなのですね。”その財を築けたのは相続人のおかげもある”ということを考慮したもののようです。遺言で相続を否定されても権利は残ってるという点、このあたりのの理解も相続トラブルの要因なのかもしれないですね。